【Vol.01】 居関達彦 氏 (安田式体育遊び研究所 所長)
安田式体育遊び研究所では、幼少期の脳と体を楽しく効果的に育む体育遊びの実践、研究により、これまで1000以上の指導案と数々の体育遊具が考案されました。
今回、SSBでは安田式体育遊び研究所の居関所長と対談し、安田式体育遊びと遊具から佐賀県のスポーツ促進の話題まで、多岐に渡ったトークの内容を紹介します。
聞き手:赤星拓
1. なぜ、今“安田式”が注目されている?
赤星拓(以下 赤星)
今日はよろしくおねがいします。先程一緒に遊具を拝見させていただきましたが、安田式遊具と体育遊びについて、改めて教えていただいてよろしいでしょうか?
居関達彦 所長(以下 居関 ※敬称略)
安田式体育遊びは、日本の伝統的な遊びから野山を駆け回る様な動きを引き出せる群れ遊びを現代のいかなる環境下でも工夫し実践出来るように体系づけられされています。大正8年生まれの教育者・安田祐治先生が自然の中で駆け回り遊んだ経験から体操選手になり小学校教諭として教育者の立場から人間形成を第一の目的に、脳神経の発達と健全な身体づくりの為に実践研究され体系づけられたメソッドです。
赤星
赤や黄色とか、遊具の色が、また鮮やかで良いですよね。
居関
赤ちゃんが視覚的に興味を持ち、ハイハイからつかまり立ち上がり、本能的にぶらさがろうとする為に考案された鉄棒は10センチの高さ違いで赤・青・黄の原色に配色されています。自分の好きな色を選択し、手の届く鉄棒を探し、できた事を自己認識し、その色も覚えていきます。
例えば、赤い鉄棒の高さは100cmあります。初めは1歳児では届かないんですよね、そうすると、自分の触れる鉄棒を探すんです。黄色の80㎝を握り、次は青の90cmに背伸びをして触ろうとします。こうやって自分で選択し、体感する事が大切なんですよね。
1歳の子が一年も経つと、体も大きくなり100㎝の赤い鉄棒に軽々とぶら下がれる日がくるんですよ。初めて手が届いたとき「できたー!!」って。頑張ったねー、凄いねと言葉かけをすると、経験と言葉と感情が一致して生きる力が芽生えるんです。この時、出来なかったことが「出来るようになった」という自己成長と自己達成を認識する思考が芽生える経験ができるわけです。
赤星
1番高い赤でいけるようになったよー!って言うんですね。
居関
そう。「お父さんー!赤に手が届いたー」「赤で逆上がりできるようになったー!」とか、自分はこの色がやりやすいとか、この間は届かなかったものに手が届くようになったという経験と感情が人生の長期記憶に刻んでいく。
どの年齢の子供達にもその子なりの子供の自己成長認識のために、10cmきざみで色違いを造っているんです。
赤星
単純に色彩で子供を惹きつけるだけでなく、自分の現状と目標設定・認識させる工夫なんですね。
居関
あと雲梯(うんてい)だと掴むところの色が赤青黄の3色が続くことで最初一本ずつ掴んで渡っていたのが、成長すると黄色から黄色へなど同じ色を目指して2本飛ばしも出来る様になるんですよ。
そのとき、「体を揺らす」「色を見極め、目標物をしっかり目で捉え」「そして全身を上手く操り握りたい目標を掴みにいく」この繰り返しのチェレンジが眼と手と全身の協応動作と、遠近感を合わせる視機能が見事に育つようになるんです。
もともと雲梯は、大人の訓練用具から始まっていまして、安田先生が子どもがワクワクする色彩にせないかんよなと考えられ、あの配色にしたわけです。当初は、職人達が赤青黄を1色ずつ塗るのが大変で「先生、これ赤一色じゃだめなんですか?」と聞いたところ、安田先生は「そんなもん訓練用具になってまうやないか!」と言われたそうです。
赤星
安田式体育遊びと安田式遊具、子どもが自然と群れて遊び、刺激し合う事の大切さを知っている安田先生だからこそ、たどり着いた遊具とメソッドなのですね。
2. 父親、赤星拓からみた、子育てについて
赤星
私の息子はサッカーを楽しんでいますが娘の方はサッカーに今の所興味がなく(笑)、安田式体育遊びは特定の種目・スポーツに限らず、歳や性別が違っても、家族で楽しめるなと感じまして。スポーツの入り口として遊びから入るプログラムを提供できる可能性、スポーツ教室とのシナジー効果を感じますね。
居関
赤星さん、ぜひサッカー教室にも取り入れて欲しいですね。
遊び方も色々あって、運動会でよくやる種目だと、ドリブル球取り大会。赤チーム白チームに分かれ、エリア中央に置かれた沢山の玉入れ用の紅白玉を、自分の陣地へ手を使わずに持っていく。
これを親子ですると楽しいですよ。全員で一斉にドリブル玉取り大会です。こんな遊びが沢山あるんですよ。
赤星
今、コロナ禍なので、自粛していることも多いですが、サッカーだけでなく裾野を広げた体育遊びのイベントもやりたいですね。
居関
サッカー、野球という一つのスポーツを教室的に習って頑張る時代になって長いですよね。昔は、「今日はサッカー」「今日は野球」とか、あるときは野山をかけまわって鬼ごっこしたり。いろんな身のこなしを経験してきた子ども達が、成長してくると自分はサッカーやりたい、私は野球、と自己欲求からくる判断が出来る様になった時に、これまでのあらゆる動きの経験から、脳に刻まれた多様な無意識の動作が、必要な時に、とっさにアウトプットされるんですよ。これって幼少年期の楽しい遊びで小脳に刻まれた無意識の動きなんです。
今の子どもたちにも、存分にいろんな遊びを経験して、プロの動きを見た瞬間真似したくなって、お自分にもこんな動きができるんだと実感してほしいですね。
赤星
気になる所として、今は安全に遊ぶ事が重視されているように感じていて、親も子どもも安全に遊びたい、遊ばせたいと、一人の親としておもうのですが過保護になりすぎてないかな?と思うこともありますね。
居関
安全の話なんですが、怪我は自分の安全能力でしか防げないないんですよ。実は、安全な遊具のほうが目的外使用で怪我したりする事も多い。大人の考える安全な遊具ってつまらなくて、子どもは登っては駄目な所に登ったりするんです。大人の考える目的外使用をするのが子どもです。まさに自己身体能力を認識する為に成長期に本能的にする動きなんです。大人になってもその本能の強い方が冒険家ですよね。
成長期に自己身体能力を認識する経験の中で子どもの「安全能力」を身に着ける事が人生のとても大切な事です。安全能力は四つです。
1「状況を察知し危険かどうか判断する力」
2「危険を回避して受け身をとる身のこなし」
3「仲間と自分を守る規範意識」
昔は野山の遊びで全部身についていたんです。
安田式を実践頂いている園、学校では、遊びを通じて安全能力を高める活動をして頂いています。人生の怪我は転倒、衝突、落下です。その瞬間、誰も助けられない。自分で自分を守るしかないんです。それを保護者・地域の皆さんに説明しています。転んだら手をつく遊び、避ける遊び、実際体験してもらいながらお伝えしています。
「安全能力」が身につかなければ、人生の怪我は減らない。
これは私よりスーパーゴールキーパーの赤星さんが伝えて頂いた方が説得力あります。
赤星
弊社SSBの使命と、安田式体育遊びってリンクしていますね。スポーツを通じて人生を豊かにするための、一つの選択肢・提案として安田式体育遊びから入っていくのも良いと感じました。
3. 教育県・佐賀県のスポーツ促進
居関
現在、安田先生のご自宅住所の公益財団法人外あそび体育遊具協会が、先生の思いを引き継いで全国の小学校に鉄棒を寄贈しています。佐賀県の小学校に鉄棒を寄贈して、そのときに赤星さんと一緒に保育園・幼稚園・小学校との連携活動の一貫として取り組みたいですね。園児と小学生の合同体育遊びをやって、市町の方にもみてもらいたいですね。
広島県尾道市の事例ですが、小学生と園児が混ざってリレー競争をしたんです。その時、小学生が園児を面倒みているんです。走っている時に小学生の子が園児をみていなかったら仲間の子が注意する。小学生と幼児の合同体育遊びをすれば、小学校と園の絆と成長がつなります。
例えば、体育のお兄さんみたいな役割で、赤星さん「今日の遊びは〜」と言って、遊びを地元テレビのコーナーやweb等で配信するのもの面白い。それが小学校の運動会の種目になったり、今までのご経験と安田式のノウハウをつないで実現してもらいたいです。
赤星
先程言われた(安田式の)ノウハウがあるので、入りやすいですね。老若男女問わず、心身の健康をスポーツで育て養う。赤ちゃんが手を付く所から入っていこう。こけたときに、ころんと受け身が取れる子を育てていく、そういう所にメリット感じてもらうように考えたいですね。子どもにエンターテイメントとして遊びを提供する。子供達の環境づくりは私達大人の使命ですよね。
居関
小学校の10歳ぐらいまでに体を動かす快感を存分に経験し、身につけた巧みな動きで、運動することが気持ちいいという脳のスイッチと知的好奇心のスイッチさえ入れば、自主自発で学力も上がってくる。佐賀県の朝一番は体を動かして盛り上がれるような仕組みを創ってほしい〜。その取り組みに火をつけられるのは赤星さんですよ。ぜひお願いします。
赤星
体を動かし続けないといけないというのは、大人になってから感じます。運動できる機会の喪失というか。健康を維持しないと、勉強もできない、遊びもできない、それこそ仕事もできない。だから、子どもの時からおもいっきり遊ばせてあげようよっていう事。大人も一緒にできるとなお良いですね。
スポーツに携わるものとして、フィジカルや技術向上を突き詰めつつも、人間力とか、生きる力とか、人生を豊かにするために取り組んでいきたいですね。
遊ぶ環境作りについての課題もあると思います。コストもかかるが、子どもたちに対しては良い環境を準備してあげなければいけないと思いますね。
居関
子どもの成長は将来の国の人材への投資ですから最も大切な事だと思っています。
体育遊び研究所は名前通り、「体を育む遊びを研究する所」なんです。体を育むために、遊びが必要で、それを実践研究し、どんな遊びが楽しく脳と体にいいか。遊びからスポーツ、遊びから勉強へという本能を呼び醒ます研究です。赤星さんも一緒に研究しましょう。よく遊び、よく学べ、昔は普通に言ってたじゃないですか。
赤星
各家庭や、教育者の方だけだと、取り組むのが大変じゃないですか。そういうことをサポートするのが我々の役割・使命として、ぜひ皆さんと協力して、実践して広めていきたいですね。
子供を夢中にさせるノウハウを知ると、心が楽になる。毎日が楽しくなりますよね。
居関
今後とも子供達の未来のために、どうぞよろしくお願いします!
安田式体育遊び研究所 所長 居関達彦
安田祐治氏より研究所を引き継ぎ、幼少期の年齢発達に応じた体育遊びを体系づけた「安田メソッド」の研究と普及に努める。子供達の体力低下、安全能力低下の現状を捉え、その解決策として具体的な体育遊びの実践公開保育と研修会を各地で行う。
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Blog「がんばりまめ.com 所長ブログ」 https://ganbarimame.com/blog/
Web「安田式体育遊び研究所」 https://yasuda-method.com/
株式会社SSB 代表取締役 赤星拓
1984年生まれ、福岡出身の元プロサッカー選手。ポジションはGK。福岡大学卒業後、2007年当時J2サガン鳥栖に加入し2011年にJ1へ昇格。2018年シーズン限りで現役を引退。現役引退後、ベストアメニティホールディングスに在籍し、レジャー事業を担当。2021年5月に株式会社SSBを設立し、佐賀県のスポーツ振興支援全般、また、全国のプロから民間クラブまで広くスポーツマーケティングのサポート事業を展開し、スポーツを通じた地域貢献の活動に取り組む。
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公式HP https://ssbiz.jp/
Instagram https://www.instagram.com/akahoshi.taku_1/
【撮影場所】CAFE ON THE GRASS as youfeel… /
リタエコロジーターフ展示場 / 安田式遊具 九州展示場
〒849-2102 佐賀県杵島郡大町町大字福母214
企画製作:リタジャパン株式会社